メルマガ120

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「森の駅発」メルマガ NO.120 2019 August
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★ 植物観察会レポート 大森 明
 「昭和記念公園の森を歩く」
★ 健康住宅研究会 市川 皓一
 「耐震健康シェルター『命守』(2)これからのビジョン」
★ 山小屋通信 大森 明
 「左利きと道具 - 1 山小屋の草刈り道具」
★ 8月の報告/戸田 吉彦
「植物観察会・昭和記念公園」
  「地方創生SDG’s官民連携プラットフォーム参加」
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森の駅推進協議会・植物観察会レポート 大森 明
「昭和記念公園の森を歩く」


8月24日、毎回野外樹木観察会で講師を引き受けて下さる桜井尚武先生と、
今回特別ご参加頂いたこの公園の誕生以来よくご存知である案内役の小川かよ子さんの、
お二人による引率のもと、昭和記念公園の森(立川市・昭島市)を訪れました。

この公園は旧・米軍立川基地のあったところで、昭和50年代に日本へ返還された後、
整備され自然豊かな公園に生まれ変わった場所です。
軍の基地だった事から、今でも広い草原に木がポツポツ生えた緑地だろうと、
素人考えで勝手に想像していましたが、まったく見当はずれでした。

枝を大きく張る太い幹のケヤキの独立樹、実を付けたスズカケノキ、トチノキ、
タイサンボクなどの高木、武蔵野にかつて広がっていた典型的なナラやクヌギの雑木林、
シイ・カシといった照葉樹エリアやヒノキ・サワラ・コウヨウザンなどの針葉樹エリアあり、
といった具合に、豊かで多様な樹林が広がっていました。

池・湿地・小川・草原・花畑も随所に配され、秋の七草をはじめ、色々な草花や低木、
そしてキノコ類も見られました。花はちょうどサギソウ、ユリ、ハス、スイレンなどが、
時期を迎えて綺麗でした。ハナイカダも葉にちょこんと実をつけていました。

桜井先生と小川さんの的確な案内と説明のお陰で、木かげを辿り日差しを適度に避け、
気持ちよく森を歩くことができました。

雑木林では、コナラなどの伐採した切株から萌芽更新した芽が数年経って、
立派な森の若木として育っている様子もあちこちに見られました。
そしてある程度の太さになったらまた伐採されて切株になり、
切株がまた萌芽更新するという繰り返しです。
もし萌芽更新しなくなったり木が枯れたりしてそこに空間ができると、
近くの小さな実生の苗木が後継者として成長し始めるそうです。
長い間、昔の人々の生活を支えてきた雑木林の循環システムを垣間見た気がしました。
高齢化と若年層不足に悩む某国の人間社会もこんな感じで、
緩やかにバランスをとっていけないものかと思いました。
また雑木林も、時代を経てコナラやクヌギなどが育ちにくい土壌になってしまうと、
土壌を選ばず成長するアカシデやイヌシデなどが多くなるという話しも伺いました。
人間の営みにより森の樹もシイ・カシ→ナラ→シデと変遷していくのも興味深い点です。

このほか、かや葺きの古民家や土蔵などを移築して再現したかつての人里のレトロ感や、
数寄屋造りの建物の周りに池や松を配した日本庭園の落ち着いた雰囲気も楽しみました。
かや葺きの古民家内には、養蚕の道具・竃・囲炉裏もあり、
すぐ横にある水車小屋とせせらぎも良いアクセントになっていました。

昼は冷房がきいている木造レストハウス内で持ち寄ったお弁当やお握りを食べ、
嬉しい休息タイムになりました。トイレも各所にあり安心でした。
午後も園内を回り最後は湖畔のレストランで休息と水分補給、無事解散となりました。

帰路、この土地が米軍から返還後に団地や遊興施設ではなく、
公園にしてくれて、本当に賢明な判断を下してくれたと思いました。
また、この公園のプランやデザインをされた方々、現在まで植樹・草刈り・地形整備・
水利整備などされてきた関係者の、長年の努力にも感謝したいと思います。

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森の駅推進協議会・健康住宅研究会 市川 皓一
「耐震健康シェルター『命守』(2)これからのビジョン」


前号の内容通り、これまで開発してきた耐震健康シェルターは屋内型として想定し、
住戸内にインセットする前提で、住人の命を守る事を中心に考えていました。

しかし、2011年3月11日の東日本大震災から8年経過すると、
その後の被災者の生活基盤をどうするかという問題がクローズアップされてきました。

被災直後は応急の仮設住宅に入ったものの、2~3年後には住宅再建をする事が、
仮設住宅の延長線上にあるのです。
仮設は本設にならず、若い人ならまだしも高齢者には、コミュニティの崩壊も含め、
居住環境の再構築は難しく、そのまま住んでいたいとの思いが生まれているのです。

我々が提案する耐震健康シェルターは、一基3畳程度を基本サイズとしていますが、
4.5畳や6畳へも拡大出来るので、大きさの違う大小シェルターの隣接する間隔を広げ、
そこを大屋根で覆うファミリースペースの確保を想定すれば、
被災時の最小空間が自在に拡大する事が可能になり、恒久的な住まいとして成立します。

そのようなイメージのもとで、今年は本シェルターを普及させるもう一つの方向として、
屋外型のシェルターを提案する事にしました。
具体的な展示場所も、今までの展示会場の荒川区東尾久からほど近い荒川7丁目に、
土地を提供して頂ける事になり、そこに屋外型シェルターを設けるべく進行中です。
シェルター単体ではなく、家具や生活空間の装備も備えたライフスタイルの提案です。

最近はリゾート地の施設で、グランピングという概念が欧米から導入されつつあります。
自然豊かな林間スペースにフラットな床をつくり、そこに大きな施設を作らず、
コテージより小さい箱を置き、森で人が過ごす最小のスペースで自然とマッチングします。

都会の人が自然に親しむために、これまでは大型リゾート施設を作るのが普通でした。
建設側の都合と利用者の利便性で、自然破壊も辞さない方法を取って来たのが現実です。
しかしグランピングは、自然生態系を損なう事なくリゾート開発が出来るだけでなく、
大災害が発生した時に転居できる、防災サブシティとしての機能も生まれます。
日頃は、都会に住む人の第二拠点としても有効に機能できるので、効用は三倍にもなります。

ところで、林野庁は現在「農泊」事業を推進しているのをご存知でしょうか。
2020年の東京五輪開催を機に増える海外からの観光客、いわゆるインバウンド事業として、
緑あふれる山里に誘致するため、その一翼を既存の農家をリフォームして開放する案です。
例え国有林へのアプローチでも、大規模開発を伴わずにリゾート開発を進める事ができる
手段と方法として、耐震健康シェルター(の発展形)が見込めると考えています。

現在も競合する商品として、「良品計画」の小屋シリーズや、貨物コンテナ―を再利用し、
スチールBOXに内装を施した高級なリゾート基地施設などがあります。
アウトドア用に仕様を整え、防災健康シェルターと兼用した実施計画をプレゼンテーション
すればグランピングリゾートとして、さらなる発展を望めるだけでなく、森を育む手法として
様々な展開が生まれるものと確信しています。(冒頭グランピングリゾートイメージ図参照)

おりしも全国に分布する93の国有林は、日本美しの森として、広く一般の人々に
開放される方向で、国の施策は進んでおります。
地域に基づいた森との共生が、防災システムとコラボレーションする事で、
さらに役立つ事を願っています。

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山小屋通信 大森 明
「左利きと道具-1 山小屋の草刈り道具」

当方を含めて少数派として存在する左利き。
LGBT問題ほどではないが、左利きの山小屋生活における道具問題を考えてみた。
例えば、山小屋で使用頻度が高い草刈り鎌やエンジン付き草刈機。
鹿が増えたため、刈る草は以前ほど多くないが、それでも春から秋は出番が多い道具だ。
だが、山小屋建設当初に右利きの方々から頂いた鎌は当然だが右利き用。
これを左手に持つと刈りにくい。
テニスのバックハンドのように刈ってもみたが、これも刈りにくい。
ストレス発散に山小屋に来ているのに、何だかストレスがたまる。
意を決して左利き用の鎌を買おうと大工センターに行くと、左きき用の鎌は品揃えが少なく、
気に入ったデザイン・仕様のものが無い。
生産ロットの関係か価格も高い。購買意欲が低下する。
結局は手持ちの鎌が壊れた時にやっと、左利き用か、左利きでも支障なく使えるデザインのもの
(左右両用)を購入して問題解決を図ることになる。
一方、エンジン付き草刈機については左利き用が元々無い。
慣れれば大丈夫という解釈だろうが、刃の回転方向の関係で左手を引手として使い続けるので、
やはりバックハンドだけでテニスをしているようになり、しっくりこない(→ストレス増)。
鹿が毒草や嫌いな雑草も残さず食べてくれればと思うが、期待できない。
視点を変え、道具という意味で楽器の世界では左利きはどうなっているのだろうかと考えた。
好きな左利き音楽家でいえば、ジミヘン氏は右利き用ギターをひっくり返して弾いていた。
P・マッカートニー氏はベースやギターは左利き用を使っているが、ピアノは普通のもので、
昨年の公演でも元気に弾きまくっていた。
プロは右だ左だなどという細かいことを気にしないのかもしれない。
結論として山小屋の道具については、ケチケチせず左利き用を揃えてストレス予防をし、
もし左利き用が入手できない場合は、
右利き用の道具を右利きの人よりうまく使いこなせるレベルまで習熟せよということだろう。
※山小屋の心得:
『うまくいかないのは道具のせいではなく、己の技術の無さ。弘法(工房)は筆を選ばず。』

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8月の報告 戸田 吉彦

人と樹木の理想の関係を桜井尚武先生に学ぶ「野外勉強会シリーズ」3回目は、8月24日(土)に
「国営昭和記念公園」(東京都立川市・昭島市)で開催しました。桜井先生のご配慮で、
公園が出来て以来会員となられ、少なくとも百回以上は訪れ公園を隅々まで熟知しておられる、
小川かよ子様にご先導ご協力を頂きました。詳細は先の大森氏のレポートの通りです。
東京ドームの約40倍の広大な敷地に、季節の美しい樹木や花を配した日本を代表する公園は、
昭和30年代の武蔵野を再現した里山、樹木と水辺を調和させた日本庭園と、見所満載でした。

国連サミットで2015年に採択され、2030年までに達成すべき人類の目標として掲げた17の
目標であるSDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)は、日本でも
安倍総理主導のもと内閣府が、地方創生SDGs官民連携プラットフォームとして結成開始1年。
今年4月に入会を勧められ森の駅推進協議会を申請、認可され、8月26日(月)の総会に出席。
総会は内閣府地方創生推進事務局参事官による前年度活動報告、役員選出、今年度活動方針、
内閣府地方創生担当大臣の挨拶、建築環境・省エネルギー機構村上周三理事長の基調講演、
新役員会長の北橋健治北九州市長らのパネルディスカッションなどから活動を具体的に理解。
随所に人口減少へ向かう地方の問題、森林問題が問題提起され、プラットフォーム組成による
知恵の共有は、規模こそ違え森の駅推進協議会創立のイメージビジョンと同じと理解しました。

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