小島孝文氏(林野庁 木材産業課課長)講演:国産材利用の現状と今後の展開方向

去る6月2日の夕刻、かねてからのご案内に従い林野庁から小島課長をお迎えし、国産材利用の現状と今後の展開方向について講演、その後活発な質疑応答の時を持ちました。
この号では、簡単ではありますが、講演の配布資料と口述筆記をもとにご報告致します。
講演内容 小島氏はパワーポイント(スライド)を使用し、豊富なカラー図版を用いられて講演。多岐にわたる内容と膨大な資料でしたが、聴講者の理解促進にとのご配慮でしょう、次の分かりやすい見出しがありました。
□ 国産材利用の現状と今後の展開方向について□ 我が国のかつての「木の文化」、日本人の生活の中には木があふれていた
□ 木材利用の意義
□ 国内の森林資源は利用期
□ 我が国の人口推移の見直し
□ 木材需給の現状
□ 林業・木材産業の現状
□ 「林業成長産業化」のシナリオ
□ 国産材の安定供給体制が目指すところ
■ 木材需要創出・拡大におけるポイント
■ 国産材の需要構造
■ 階層別・構造別の平成25年度新設着工床面積
■ 公共建築物等の木造を巡る動き(戦後)
■ 都市の木質化に向けた新技術の開発・普及
■ 土木分野における国産材製品の活用
■ オリンピック・パラリンピック関連施設における木材の利用方法
■ 森林認証について
■ 「林業復活・地域創生を推進する国民会議」の活動と推進
■ 産業界における国産材需要拡大に向けた取組

□ 国産材利用の現状と今後の展開方向について現在、林野庁では新しい国産材の利用を進めています。
しかし国産材利用の最終需要者である国民一人一人に林野庁の考えが伝わらないと施策は進んで行きません。
本日は、林野庁が今どういうことをやろうとしているかをご説明致しますので、皆様方にご理解を頂きたいと思っています。
説明時間は30分程、そのあと意見交換と聞いていますので、簡単な説明になるかと思いますが、意見交換の時間の中で色々とご質問頂きたいと思います。

□ 我が国のかつての「木の文化」、日本人の生活の中には木があふれていた我が国はかつて「木の文化」の国と言われました。
百数十年前までは家、城郭、寺社、橋、土木工事などあらゆるところで木がたくさん使われ、身近な生活用品も木を使ってきました。
しかし、特に平成になってから、生活の身の周りから木材が使われなくなった。
TVのお茶の間ドラマの、昭和の家族団欒に見られる畳の部屋、卓袱台、襖や木製建具などの光景も最近は見られなくなりました。
もう一度、身の廻りに木を使ってゆく取組みを進めて行かなければいけないと考えています。

□ 木材利用の意義木材利用の意義は、まず木材は湿度を調整するなど快適的な居住環境を提供し、使っている人に優しい。
また木材を使うことで大気中の炭素を固定し地球環境にも良い。
木材製品は他の鉄・プラスチックなどに比べて製造・加工に要するエネルギーも少ない。
石油製品を買えば金は海外に流出するが国産材を使えば金は国内で廻り地方創生に役立つ。
木材は再生可能な資源であり「伐って、使って、又植える」というサイクルを通して、森林整備が行え、自然環境を守ることができるなど木材利用の意義は大きい。
こうした木材利用の意義を皆さまに理解いただき、国産材の利用を進めて行きたい訳です。

□ 国内の森林資源は利用期日本の森林の現状は、国土面積の3780万haの7割が森林で、森林率で言えば世界第3位。この森林の4割の1000万haがスギ、ヒノキ、カラマツの人工林です。
これは昭和30年代、石油・石炭の使用で炭焼き山が経済的価値を失い、瓦屋根や金属葺屋根の普及で茅葺屋根の原料・茅を供給していた茅場も経済的意義を失う中、当時高度経済成長、戦後の復興等で木材需要が急激に高まり、国の発展とともにこれから木材需要が伸びるとの予測のもと、薪炭林や茅場をスギ・ヒノキの人工林に変える拡大造林を進めた結果です。
拡大造林を始めて50~60年たった現在、人工林の利用期を迎えています。
一方地方創生の観点で見ると、昔の地方活性化は、都会から工場を地方に移転し製品を作り、海外へも輸出することで地方に雇用を確保してきましたが、グローバル経済の中、現在製造業が海外に移転する今、地方に持続的産業を作って雇用を確保し、地方にある資源を使っていくことが重要です。
そのために第1次産業と観光(地方の生活に触れるような地方固有の文化に触れる観光)を通して地方に産業を起こし、雇用を確保してゆくのが今現在の地方創生でありますが、国土の7割を占めている森林を生かさない手はないのです。
人工林の齢級構成の昭和41年の齢級構成でもわかるように、戦中に木を使い切っており、戦後は若い人工林がほとんどで、用材として使える木が無かった。このため外国から安い木材を輸入しようと、昭和39年には丸太の関税を0にして、木材の輸入自由化を行ってきた訳です。
しかし、最近(平成24年)の人工林の齢級構成を見ると、9~11齢級(植えてから40~55年、1齢級:植えてから0~5年、2齢級:6~10年)の立木が多く、柱材を取るのに使いどころの山が増えてきたことが分かります。
この資源を生かして、この人工林を宝の山に変えていくことができるのが、地方創生の観点からも大きなポイントとなります。

□ 我が国の人口推移の見直し日本は人口減少社会と言われるが、人口減少は均一に起こるのではなく、東京、名古屋、大阪など都市部で増え、北海道、東北、山陰など地方で急激に人口が減っていきます。
限界集落どころか限界地域、人のいないノーマンズランドができてしまうのです。そうならないために地方創生が重要で、そうしたところに産業を育成し、雇用を維持してゆかなければなりません。
多くの山間地では、人工林を活用してゆくのがもっとも確実な方策の一つです。

□ 木材需給の現状木材供給量全体を表す棒グラフの示す通り、木材需要は年々減少傾向です。
人口減もあり長期的には減少する。
一方国産材の自給率を表す折れ線グラフを見ると、平成14年を底に右肩上がりに反転しています(人工林資源の利用期とも関連するが)。
昨年平成26年は30%を越えました。
しかし裏を返せば、まだ7割も輸入材に占められているということです。
昭和30年代、国産材はほぼ100%でしたが、だんだんと伐る木が無くなる一方で、需要が伸びて来るなか、補完的に輸入材で賄おうとやって来ましたが、いつの間にかマーケットを輸入材に取られてしまったのが木材の現況です。
しかし輸入材のマーケットの所は、新たな需要開発、技術開発をすることなく国産材で取り返すことができるのです。それができれば、全体の木材需要は少なくなってきたとしても、まだまだ国産材の供給量を増やしていくことができます。

□ 林業・木材産業の現状*国産材の供給量は、平成20年から26年の6年間で2割増した。
*林業の労働生産性は、主伐(山を全部伐って植え替える)で35%増、 間伐(植えた木を良好に育てるために間引きする)で26%増。 
今時の日本の製造業で、僅か6年間で生産性が2割、3割アップするところなどありません。 
一般の製造業では機械化・合理化が進み、乾いた雑巾を絞るように合理化努力をしているが、 残念なことに林業の場合、合理化が遅れているため、たっぷり水を含んだ状態なのです。 
ギュと縛ればこの程度はアップするという状態です。 
アップ率は欧米との数字に比べて、これからまだまだ伸びると考えています。
*林業従事者数は全体に下げ止まり状態、しかし中身は高齢者が減り若年者が増加しています。 
緑の雇用の効果も効いて、若年者が林業界に入ってきています。
※緑の雇用:若年者は経験がなく最初足手まといとなる為、林業経営者は余裕がないと若年者を雇いたがらない。
そのままだと高齢化し、林業の担い手がいなくなるので若年者の半人前分を国が3年間負担し雇用してもらい3年間で1人前に育ててもらう制度。
* 国内工場での国産材の使用割合では、製材、合板それぞれ国産材丸太の使用割合が、1割2割と増加しています。
* 木材産業企業の収益性は、5.5倍。
これは平成20年がリーマンショックで、林業企業の状態が極端に悪かったためであり、通常状態から見れば、1割増ほどです木材自給率も上がり、全体的には明るい兆候ですが、個々の企業で見ると、すべてが明るい兆候というわけではなく、勝ち組と負け組が出てきています。
勝ち組には先へ先へとどんどん走ってもらい、負け組でも頑張る人たちを伸ばしていくことで、全体の底上げになると考えています。

□ 「林業成長産業化」のシナリオ以前は、農林水産省の中での重要な位置づけにとどまり、国全体で重要位置づけはされていなかった「林業成長産業化」です。
しかし、最近では、「成長戦略改訂2015」「骨太の基本方針2015」「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」「国土強靭化基本計画」など、国の重要政策のなかにも位置づけられてきております。
このように、いまや木材産業を成長産業化とみなしてゆくのは、林業分野のみならず、国の重要施策の一つとして位置づけられるようになってきています。
「林業の成長産業化」をし「産業と雇用の創出」をはかり「地方創生」につなげて行く。
そのためにすることが「木材需要の創出」であり「国産材の安定供給」です。
「木材需要の創出」については残念ながら減ってしまう見通しですが、「国産材の安定供給」については、品質・価格もさることながら、マーケットを外材に取られた原因としての製品供給の安定性に問題があり、それを改善していくことが必要となります。

□ 国産材の安定供給体制が目指すところ国産材の安定供給のためには、川上・川中・川下というサプライチェーンの中において、誰かが儲かるのではなく、サプライチェーン全体で儲け、川上・川中・川下がすべて、ウィン・ウィン(Win- Win/互いに満足出来る状態の意味)の関係を作って行く。
そうすることで、木材産業、林業を、循環的な産業にして行くことができるのです。      

■ 木材需要創出・拡大におけるポイント国産材の需要拡大のためには大きく4つの方法がある。
1.輸入木材を国産材に代替する。
2.非木質系製品を国産材で木質化する。 
・非木材分野(ビル、オフィス、商業施設)も木造化。内装の木質化を進め、都市の木質化を図ってゆく。
・ 土木分野においても、丸ビルの建替えの時、80年前の木製の基礎杭がそのまま腐らずに出てきたが、そうしたことも含め木材を使える土木分野がまだまだある。適材適所を基本に木材を使っていく。
・家具、什器など生活用品における木材利用。
まずは身の周りの、木に直接触れ、肌で触れるところに木を使い、木の質感、柔らかさ、香り、木の落ち着く触感を体験してもらい、その後の木材需要につなげて行くことも重要。(これを木づかい運動とも言っている。)
・また、木材の加工技術を生かしたセルロース・ナノ・ファイバーなど新しいマテリアル利用の用途もある。
3.木質バイオマスのエネルギー利用の推進。
これは丸太をいきなり燃やしてしまうのではなく、建材などに色々使った後、最後の木材をエネルギーとして利用。
枝葉など木材として使えない所はバイオマスとして熱利用していくことで、収入を今までよりあげることができる。
4.国産材製品の輸出。
今後国内マーケットが小さくなるなかで、海外、特にアジアの富裕層をターゲットに、ジャパン・クール、ジャパン・プレミアムで付加価値を高めて売るという勝負ができるのではないか。

■ 国産材の需要構造立木は真直ぐな所を丸太に使い、少し曲がったところを合板に使い、その先の枝や曲がった所はパルプ、チップに使っているが、用途に応じて使い分けしている。
重要なのは、通直な原木(A材)が高く売れるので、ここのマーケットをしっかり作って行き、森林所有者に利益を還元し、山を売ってもう一回再造林しても利益が残る。
これなら皆伐しても良いと思える収益構造を作らないと循環的にならないので、そこのところをしっかりやって行く必要がある。

■ 階層別・構造別の平成25年度新設着工床面積住宅分野では、木造がたくさん使われている。だが同じような低層の非住宅(商業施設、倉庫)でも木造が使えるはずだが、なかなか木材が使われていない。
一方、中高層の大型建物には、これまで木造が難しかったが、CLT(直交集成材)など新たな部材が出てきて、こうしたところにも木材が使われるような技術革新も出てきた。

■ 公共建築物等の木造を巡る動き(戦後)第2次世界大戦の空襲や関東大震災などで各都市に大火災が発生、多くの命が失われたため、街は不燃化すべしと、昭和25年衆議院で「都市建築物の不燃化の促進に関する決定」が通過、木材資源分野でも、山に木が少ないなか、高度経済成長で木材需要が増大しているので、木材を住宅に回すため住宅以外に木を使わないよう、昭和30年「木材資源利用合理化方策」提出。都市の不燃化と相まって、昭和30年代以降の都市部は積極的に木を使わない政策が採られた。
その後、木質構造の不燃化などの技術開発が進み設計の考え方も変化、同時に木材資源の充実も進んできた中で、先の流れとは逆に、今後は都市でも積極的に木材を使う時代ではないかと、平成12年建築基準法改正(性能規定化)、平成22年建築基準法改正(木造関係基準の見直し)がなされた。
学校建築も木造にしようということで、3階建の実物木造校舎の火災実験を3年間行った結果、今日の建て方や部材を使えば、建築基準法をクリアすることが実証され、こうした建築基準法の改正がなされた。

■ 都市の木質化に向けた新技術の開発・普及都市の木質化を進めていくための新たな部材の開発の一つにCLT(Cross Laminated Timber)がある。
引き板を繊維方向に縦横に直交して並べて積層接着した板材で、コンクリートより軽くコンクリートと同程度の強度が出る。
1980年代ヨーロッパで開発され、ヨーロッパではこれを使い10階建ビルもできるようになっている。
また建築基準法の耐火時間をクリアする木質系耐火部材:耐火集成材も開発されてきている。
このように、新しい木質部材ができて、京都木材会館(4階建て)の様な建築が可能となってきており、さらに進めてゆきたい。
そして、こうした新しい木質部材だけではなく、今まで流通している柱・梁など木質部材でも設計方法を工夫することでp19のウッディアリーナ朽木、道の駅あいづのような大規模建築、意匠性の高い建築ができるようになってきた。
平成22年、国は原則として庁舎、宿舎、倉庫などの3階建ての公共建築物を木造にしなければならないという、「公共建築物等木材利用促進法」を策定し、国だけでなく、都道府県市町村に対しても一緒に取り組んで頂いている。

■ 土木分野における国産材製品の活用コンクリート型枠は、今まで南洋材のラワン合板が主流だったが、国産材も技術革新により、合板型枠として使えるようになってきている。
国産丸太材も、液状化防止の地盤改良杭として工法が開発され、広く活用され始めてきている。
さらに、これまで紹介してきた国産材の利用、都市の木質化への取り組みを積極的に進めるため、国はこうしたトライアルの事業に対して、「都市の木質化等に向けた新たな製品・技術の開発・普及」、「地域材利用促進」など補助事業で支援を始めている。

■ オリンピック・パラリンピック関連施設における木材の利用方法こうした流れの中で出て来たのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックである。
競技施設や選手村を木造化するとともに、備品等にも木を使ってもらう取り組みを進めてきた。
昨年7月25日に新国立競技場の全面見直しとなり、木を多用した隈研吾氏の案が年末に採用、これが大きなモニュメントとなり、都市の木質化に向けレガシーとなってゆくのではないかと思っている。
屋根は鉄骨と木材のハイブリット構造、日本の神社仏閣を思わせる軒庇、外周のルーバーにも木が多用され、内装も木材を使う設計。
加えて、はじめは樹脂製だった観客席も内外装に木を使いながら、肝心要の観客席が木質でないのは、画龍点睛を欠くとの意見も出て、観客席も木製にする取り組みが始まっている。
斯様にオリンピックでは様々な木材が使われるので、これまでの木質化の流れも含めオリンピックは国民に広く発信するうえで良い機会だ。

■ 森林認証について木を使うことは環境破壊だと思っている人はまだまだ多い。
そうした中で、ロンドンオリンピックあたりから、木材の調達については持続可能な森林から木材を使っている。
熱帯林の環境破壊に繋がるような木材ではないと証明された木材だけを、使うような流れになってきた。

■「林業復活・地域創生を推進する国民会議」の活動と推進こうした取り組みについては産業界からも応援をいただいている。
日商会頭の三村明夫氏(元新日鉄会長)が地方創生という言葉が出てくる7年位前より、日本を元気にするためには地方を元気にしなくてはいけない。
地方を元気にするには第1次産業が肝要だ。中でも林業は、今まで一所懸命資源を使ってきて、後は使うところをちゃんとやれば伸びて行く可能性がある。
だから、産業界としても木を使うところを応援したい。
ということで「国民会議」というのを呼び掛けて作っていただいている。

■ 産業界における国産材需要拡大に向けた取組その理念は、需要拡大をして林業を復活させて、地域創生をするというトライアングルの関係をやってゆくことで、色々な政策提言をしていただくという取り組みをしてもらっている。
分かりやすい取り組みとして「国産材マーク」というのがある。業界の人間は国産材とか外材あるいは輸入材とか言うが、一般消費者は国産材、外材など意識したこともなく、日本で家を建てれば、山にこんなにたくさんの木が生えているのだから当然、日本の木を使っているだろうと思う人が大多数。
そのような人たちを相手に、国産材を使っていただく取り組みをしてゆかなくてはならない。
ハウスメーカーの営業マンがそうしたことに関心のない施主に「国産材を使いませんか」と勧めても全然ピンとこない。営業ツールが必要という声を受け、推進するJAPIC(日本プロジェクト産業協会)の中でできたのが「国産材マーク」である。
いまや合板をはじめ、製材品、木質ボードに広がり、このように国産材を広める取り組みがおこなわれている。
以上の様な取り組みを通して、皆さんに木材を使う意義をご理解いただき、林業を元気にし、地方を元気にする取り組みをしている最中です。
皆さまのご理解を頂き、応援して頂ければ、大変有難い思いです。

質疑応答 Q.健康住宅研究会の活動についてどう思われますか?(森の駅推進協議会代表幹事 岡本)

A.無垢材は原木の元玉部分のA材から取れるので、無垢材の需要を高めることは森林所有者利益還元の点からは非常に重要で、無垢材による家作りを目的とする活動は有難い。  
昨今の大壁作りの住宅は、柱・梁が総て内・外壁の内側に入り、そこには構造強度のみが求められるが、真壁構造では柱の節の有無、敷居、鴨居の木目の良い材が求められます。  
そのための良質な無垢材は高価格で取引されるので、無垢材の家作りは木材産業にとって重要な応援となります。 
また、学校の木質化については、先程、母親を味方に付けたいというお考えを聴きました。 
私達もまた、何においても母親・奥さんを味方にするのは重要、と感じています。 
内装の木質化は、
①木材の調湿機能効果でインフルエンザでの学級閉鎖が減るとか、 
②木材の蓄熱効果で前週の金曜日の暖房熱が残っていて月曜日に温もりを感じ、朝の暖房の 熱消費量が少なくて済み省エネであるとか、 
③新建材の部屋と木質化した部屋とでの大学生による単純計算作業の効率比較実験で木質化した部屋の方は誤解答が少なく作業効率が良いなど、
様々な科学的データ、エビデンスを収集し、木材の需要開発を進めて行くことが重要です。
(木材生産課課長 小島)

Q.天然乾燥した良材の使用を可能にする、木材買付制度があります。
そのために中央農林金庫などによる、資金を蓄積できる金融システムが必要と思われますが、如何でしょう?
(岡本)A.公共建築物については、単年度予算のために天然乾燥などにこだわった木材を集められないという話もありますが、市町村長、都道府県知事が決められる「材工分離発注方式」があり、その方式を利用して、こだわりのある木造の学校建築を実現したところもあります。 
競争入札が一般的ですから、会計からは、なぜ木材だけそうするのか、と抵抗はありますが、首長が、木を使うのでこのやり方でやる、とひとこと言えばこの問題は解決できるのです。 
その他にも、基金方式という予算の取り方があります。 
複数年度の中で会計処理できるので、年度をまたいで事業を行えます。 
ただ、その方式は限られてきていて、資金をプールして無駄遣いだと、政治家の先生から、チェックを入れられることもありますが、柔軟性を持たせた執行方法として、使えることもありますので、ご相談頂きたいと思います。 
「材に対して要求すると集まらない、高価になる」という話がありました。
木材というのは そう言うものだというのがこれまでの木材業者の話でしたが、そんなことを言っていたら、木材など使ってもらえない。だから、在庫をしっかりやってゆく必要がある。原木、丸太、半製品、最終製品どれで在庫するのか、そうした仕組みは林野庁も考えているところです。 
資金にゆとりのある大会社であれば、在庫を抱えても経営的に問題はないでしょうが、中小の会社は、在庫を抱える資金を借りて、材を売って回してゆく。
回せているうちは良いが、一旦止まってしまうと、在庫を抱え倒産するのが中小企業の常なので、その1回目の分など を支援することを林野庁としても考えている次第です。 
需要に応じて、的確に供給できる体制を作って行くことが、一つの課題です。 

Q.木材サプライチェーンについては、山元から土場に出る木材費用は欧米と変わらないが、土場から最終消費者に渡るまでの費用が数倍高いという指摘にはどう思われますか?(岡本)

A.それは材によって違います。現在日本のスギが世界で一番安い木材です。  
自給率のアップもそれが原因です。昔は国産材が高く輸入材が安いと言われてきましたが、スギの柱の方が、外材に比べて価格優位性を持つようになってきています。
補助金を入れた間伐によって出くるスギ材は、原価も安く最終価格も比較的安くなっています。  
しかしスギ丸太の出荷価格は安く、山元にとって納得のいくものになっていません。 
「山元から土場に出る木材費用は変わらないが、土場から最終消費者に渡るまでの費用が、数倍高い」という指摘について言えば、だいぶ改善されてきています。 
むしろ山元の取り分が欧米に比べてメチャクチャ安い。そこを何とか利益をあげさせたい。 
昔は、木材の値段が高く、通直な丸太の部分だけを売っていればよかったのですが、安い輸入材につられて通直丸太の値段が安くなり、安くなった分、川上にしわ寄せが行きます。 
昔は大きく儲けていた森林所有者も、今では全く儲からなくなったのが現状です。皆伐し、植林しても息子の代で元が取れるので大丈夫、という収益構造を作らなければなりません。 
それには先ず、元玉以外の、今迄山に捨てていたチップや燃料に使えるB材やC材部分を、バイオマス発電で利用し稼ぐように、1本の丸太の価値を上げ収益性を改善すること。 
次に、構造強度だけが求められる大壁造の柱だけでは、なかなか収益性が上がらないので、昔珍重され、高価格で取り引きされていた、4面無節材のような、現在行き場がない良材を使うような需要を再度作ることも重要です。

Q.木材サプライチェーンには助成金が出ているからと原木が買い叩かれる問題があります。  
消費者に行きつくまでの木材価格が高いという問題も含めて、土場以降の流通に、林野庁、国交省だけでなく、経産省も関われば改善されるのではないかと思いますが?(岡本)

A.ようやく、みんながWin- Winになるようなサプライチェーンが示されてきていますが、 これまでは、川上と川中が握手をしていませんでした。
川上は買い叩かれたと思い、川中としては、欲しい時に材も出せないくせに何をいっているという関係でした。 
物の値段は需給関係で決まるので、川上の山元は買い叩かれないよう供給すべきなのです。 
しかし川上は、需要状況を読まず、何も考えず自分の都合だけで丸太を出していた訳です。 
昔は、需要供給のバランスの中で製材工場が高値で買い付けたかもしれないが、今はそんなことなら輸入材を使うと言われる状況です。
川上としては、丸太が出荷された後どのような 価格になっているのか? いつ出せば高く売れるのか? 考えるべきなのです。 
一方、今や何十億円規模の設備もある、装置産業としての製材工場は、それを5年10年で 償却しなくてはなりません。そのため、丸太を安定的に購入、安定したコスト採算の必要があります。
しかし木材市場で木材価格が短期間に変わるようでは、コスト計算も無理です。 
それである時は髙値で買って損も出すが、ある時は買い叩き利潤を確保し相殺する、そんな商売も今まで多かったのです。
しかしそれでは、川上、川下、どちらにとっても不幸です。 
今後は、製材工場側が、マーケットの価格を見て買える値段を提示し、その値段で3ヶ月、半年と安定して買う。
川上もこの材を出せばいくらの価格で売れるのか、分かれば安心して生産できるし、生産効率を上げてどれだけ儲けようかということも考えられます。 
これからは、そのような生産と需給の関係を作って行くことが必要です。 
そうなれば、川上・川中・川下が、Win- Winの関係になります。 
それが、大ロット化、直送化、システム販売ということです。 
要は、その都度、いちいち競りで価格を決めるのではなく、製材工場と供給側がある程度の量をまとめて協定取引を行い、安定化をはかり、互いの接点を見出せば、Win- Winの関係になって行くということです。
また今までは輸入材が安かったという話もありましたが、為替が、半年の間に1〜2割も変わるのでは、製材工場としてはまともな原価計算もできない。 
しからば、国産材の価格が多少高くても、安定供給してもらえるなら、国産材に切り替えても良い。
このような流れになってきています。
(このほかに参加者からも多くのご質問がありましたが、紙面の関係で割愛致します。ご了承下さい。)

司会:当会副代表桜井からひとこと今日の締め括りを致します。(森の駅推進協議会幹事 西村)
桜井:今日は小島さんありがとうございました。課長の面目躍如でございました。  
木材産業課長のお立場から、出口をちゃんときっちりしろというお話を、上手にまとめて頂いたと思います。特に最近は木材の受け皿の方がかなり分かってきた、分かっていない方が多い中で、分かってきたということです。  
新国立競技場を設計された隈研吾さんが、木材を絶対使うと頑張っておられます。
認証材をしっかり使うのだという話もされました。
そういう基調が整いつつあるこの好機に、もっと国産材の意義を出して欲しいと願っています。  
大手ハウスメーカーの家は、相当の宣伝費も入った価格だということを思うと、木材そのものの値段にプラスが入っている。
それでもその値段で売れるのですから、無垢の木材はもっと売れて然るべきでしょう。
今日、いいお話がありました。  
無垢の木材の家は、次に売る時にもちゃんと高く売れる。  
「平均寿命では、これから住んでも20年です。今から100年住宅を建ててどうします。子供達はそんなものいらないと言っていますよ。」と言われ困っていました。  
しかしこれからは、売る時にも高く売れる、と言えます。(笑)  
山の方のお話しになりますが、無理に植えた所で駄目なところは無理しない方がいい。  
しかし、国産材を使わなければいけないというところはあるのだということで、林野庁はいろいろと叩かれながらも、粘り強く続けてこられました。
継続は力なりといいますのでこれからもよろしくお願いいたします。  
我々もまだまだ応援をして行きたい、皆さまと情報交換をして行きたいと思いますので、森の駅をこれからもよろしくお願い致します。    
(森の駅推進協議会副代表 桜井) 記事作成に当たっては、講演記録テープから書きおこされた当会杉山顕一氏のご協力を得て、メルマガのスペースに合わせて編集部で整理編集、一部割愛致しましたことをご了解下さい。